2007年09月10日

160−180粒、140−150粒、110−120粒

今日、車の運転をしながらニュースを聞いていたら様々な加工食品の値上げが相次いでいることを報じていた。なかでもバイオエネルギー、いわゆるトウモロコシやサトウキビを原料にしたエタノール生産の増産や温暖化の影響などによる3大穀物(トウモロコシ、小麦、大豆)生産や供給体制の国際的不安定化が原因として挙げられ、その根本要因は環境問題ということを強調していた。

この問題は随分と前にこのブログでも取り上げたが、いよいよ加工食品に限らず、特に魚介類や肉類、乳製品など餌や製品のほとんどを輸入に頼る食品全般の値上げが本格化してきた。

ニュースではこの値上げが続くと1世帯の食費負担が月当たり3000円強、年間4万強の負担増になるというシュミレーションをしていた。

フードトラスト岩木川(青森トキワ養鶏再訪)
8月30日、31日と2日間かけて、白神山地の青森側入り口で岩木川の源流の村、西目屋村から中流域の藤崎町、そして最下流で日本海につながる十三湖という汽水湖まで行って来た。以前にも紹介したようにこの流域で農薬や化学肥料を減らしながら環境に配慮した農業を広げようというのがフードトラスト岩木川の取り組みだ。
岩木川の源流の村、西目屋村の全景西目屋村全景













今回は食と旅をテーマにした「ワサビ」という雑誌で、フードトラスト運動に取り組む生産者の産物の販売を応援するネット販売サイト「フードトラスト食味選定委員会」の働きかけで、フードトラスト岩木川の特集を6ページで組むということで、その取材班を案内することになったというわけだ。

特にトキワ養鶏の飼料米の取り組みは勉強になるのではということで、ブログ「やまけんの出張食い倒れ日記」の山本謙治君も参加した。

岩木川源流の水(白神山地の入り口にある)の味をたしかめながら写真を撮るやまけんやまけん源流の水の味













やまけん源流の写真撮り


















ぼくは取材にさきがけ、「ワサビ」の取材班に以下のような「取材の視点」という文書を届けておいた。

「フードトラスト岩木川」取材の視点
世界遺産の白神山地を源流とし、青森県を縦断する岩木川は上流域の西目屋村から中流域藤崎町を流れ、汽水湖として大和シジミを産する十三湖を通じ日本海へ流れ込む。

世界に残された貴重なブナの原生林である白神山地は、同時に青森の重要な源流域でもある。世界遺産が生み出すこの清浄な水も岩木川の流域の農業や生活から排出される化学物質や廃棄物によって汚染され、最終的には十三湖の環境を悪化させ、大和シジミに農薬等の化学物質が残留していくことになりかねない状況にある。

実際に大和シジミで有名な島根県出雲市の神西湖、宍道湖、鳥取県東郷池などでは、すでに殺虫剤(シラフルオフェン)や除草剤(クミルロン、チオベンカルブ)が食品衛生法の残留基準値を超えて検出されている。その結果、操業自粛や中止に追い込まれている県や漁協はJAなど農業者に対し、当該農薬の使用中止を要請している。

こうした問題を視点として、「フードトラスト岩木川」の取り組みは白神山地を水源とする岩木川周辺の農業や暮らしを環境保全に資するものに転換し、「自然あっての青森」を象徴する地域のあり方を提案し、未来への責任を果たそうとする取り組みである。

今回は山と畑と海をつなぐ「岩木川流域経済圏」という観点から岩木川上流域の西目屋村、中流域の藤崎町、下流域の十三湖を、地域を結ぶ線として捉え、それぞれにどの様な環境や食、林業、農業、漁業の問題があり、解決策があるのか、実際の現地での取り組みの取材を通してフードトラストの考え方、食味選定委員会の活動の意味を明らかにしていく。


というわけで、詳しい取材内容は「ワサビ」の10月号を読んでほしいのだが、最初に書いたように生鮮食品も含め、これから日本の食品は値上げが本格化するが、畜産に関して言えば、トウモロコシや小麦などの飼料用穀物の値上げ、石油の値上がりによる輸入費用の高騰などがその大きな要因となる。

この問題はほっておけば国内生産者の命取りになる。

そこで以前取り上げたトキワ養鶏の飼料米による餌の自給化の取り組みは、とても先進的なものであり、日本の畜産の将来を占なうとても大きな取り組みとなっている。

今回、ちょうどその飼料米が育つ水田を見ることもでき、とても参考になった。

トキワ養鶏の飼料米の実験水田。左が「べこあおば」右が「むつほまれ」飼料米の水田














べこあおばの穂
標題の160−180粒というのは、下の写真の飼料米として栽培した品種「べこあおば」の1つの穂になる米粒の数だ。













むつほまれの穂
次はもう1つ実験的に栽培している「むつほまれ」という品種で、1つの穂に140−150粒という数になる。














そして「津軽ロマン」など食用米の場合は一般的に120粒前後となる。

つまり、現在トキワ養鶏で栽培している飼料米でも食用米の1.5倍ほどの収穫量になる。これから目指しているのは2倍から3倍の収穫量になる本格的飼料米の栽培だ。それが安定化すれば飼料用穀物の高騰によって、国産米による飼料の自給化も十分に可能性のある話になってきたということだ。

現在トキワ養鶏で、飼料米で育てている鶏の数は150羽と少ないが、とても大きな意味のある150羽なのだ。


さて、鶏の品種は採卵鶏としては唯一といっていい日本の品種でゴトウモミジ(下の写真)。その150羽の鶏が産む卵は、産卵率80%(一日に一羽の鶏が産む卵は平均0.8個という意味)で、一日に120個ということになる。
ゴトウモミジ平飼い













ただし、その卵の餌の自給率は玄米が58%の比率で、その他の自給部分を含めると餌の自給率75%となる。

青森には現在2万ヘクタールの休耕田(減反や放棄で米が作られていない水田)がある。そこで飼料米が栽培されれば、自給率75%で400万羽の鶏の餌が確保できることになり、一日320万個の卵の生産が可能となるというわけだ。


ちなみに下の写真は100%輸入のトウモロコシを主体にした飼料。黄色い粒々がトウモロコシ。トウモロコシ主体の飼料














この写真が「べこあおば」の玄米を主体にした自給飼料の写真。違いがわかるだろうか米主体の飼料














この両方の飼料で生産した卵を比較した写真だが、左がトウモロコシ主体の卵、右が米主体の飼料の卵。その色の違いが歴然としている。米主体の卵の色は白っぽい。いわばこれが日本の卵の本来の色と言ってもいい。卵の比較













さて今回の訪問では、そのほか西目屋村でのバラ栽培での地域おこしの企画や藤崎町での環境保全型農業の取り組みや地域食材による学校給食の企画(地産地消)の話、トキワ養鶏での無農薬によるりんごの実験栽培、そして岩木川流域の環境問題が引き起こす十三湖のシジミ漁の将来的な問題などたくさんの事柄に触れた。

今回、「フードトラスト食味選定委員会」代表の引地君もその現場をつぶさに見てみたいと一緒に訪問した。

トキワ養鶏代表の石澤君ともうすぐ収穫となる「つがる」というりんごの栽培談義をする引地君りんご談義石澤、引地













フードトラスト食味選定委員会で卵と肉を販売する「ネラ」という品種の鶏の放し飼い圃場で石沢君から話を聞くネラの放し飼いと引地、石澤















にしても、さすが出張食い倒れ!を標榜するやまけん!夕食は石沢君の案内で焼肉をたっぷりと堪能したあと、さらにもう一軒。弘前ラーメン大盛りに、さらに蕎麦ととどまるところを知らない。さすがの健啖家、引地君も唖然だ!やまけん、引地ラーメンとそば












今回同行したやまけんは飼料米の卵の味をとても適確に表現をしていた。さてどんな表現になるか、今回の旅で感じたことを、彼は彼の視点でブログ「出張食い倒れ日記」に書いてくれることと思う。興味のある人は是非アクセスしてほしい。      

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